コラム

コラム

boy メッセージ to CAMP for CAMP from CAMP girl

CAMPの活動に協力してくださる方や、スタッフ・関係者からのメッセージを紹介します。

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第62回目
(2008年12月12日更新)

山内祐平/東京大学大学院情報学環准教授

この春東京大学赤門横にオープンした情報学環・福武ホールでは、CAMPが定期的にワークショップを開催しています。「知の権威」としてイメージされる東京大学でこどもたちが楽しそうにワークショップに参加している様子を見ると、大学が今後あるべき姿についていろいろ考えさせられます。

大学が象牙の塔ではなく社会に開かれた存在になるべきであるという主張は、いろいろなところで語られています。しかしながら、大学が実際に行ってきたことは、公開講座やシンポジウムの開催であり、興味がない人は来ないでもいいという消極的なスタンスのものが多かったのではないでしょうか。これからの大学は、様々な方法で人々にアプローチし、コミュニティを形成することから新しい研究を生み出していく場になっていくでしょう。そのための鍵になるのがワークショップのような活動だと考えています。もちろん、このような活動を持続的に展開していくためには、大学だけでなく、企業の社会貢献活動やNPOとの連携が必要不可欠になります。そういう意味で、CAMPは東京大学が社会に開かれた存在になるために欠かせないパートナーなのです。

現在、この関係をさらに進めるために、「あちこちCAMP」のファシリテーター育成プログラムを組み込んだ学部生向けの授業を始めています。このような試みが広がれば、ワークショップを指向する大学生が社会に巣立っていき、いろいろな場所で実践を展開することになるでしょう。

CAMPマインドを持った多くのファシリテータが、日本の学びの風土を変える日が来ることを願っています。

山内祐平(やまうちゆうへい)
1967年愛媛県生まれ、大阪大学大学院博士後期課程中退。
大阪大学助手、茨城大学助教授を経て、現在、東京大学大学院情報学環准教授。
専門は教育工学・学習環境デザイン論。最近は、ワークショップやラーニングスペースのデザインに関心を持っている。情報学環・福武ホールの場のデザインに対して、2008年度グッドデザイン賞を受賞。

第61回目
(2008年11月05日更新)

鍛治舎 康昭/けいはんな新産業創出・交流センター コーディネータ  NPO法人日本創造力開発センター 事務局長(常務理事)

私は1998年の10月に、オムロン東京事業所からけいはんな学研都市に出向して立地機関の方々にお世話になってきました。

CAMPの活動を見学した折に、京都発の等価変換創造論をもとにして、こど
も発明ワークショップができないものかとご相談できたのもこのようなご縁があったからだと感謝しています。おかげさまで、今年の8月で「等価変換理論でこども発明ワークショップ」も8回の開催となり、毎回進化したプログラムで、ファシリテーターのメンバーが工夫しているのはうれしいことです。

私は、学生のときに市川亀久彌先生の課外授業で、たまたま出席したときが契機となって「等価変換理論」に興味を持ちました。理論のエッセンスは、「異なったものの中に潜む同じものを見つける」という等価性の発見にあり「観点(見方)が変われば、ものごとの本質が変わって見える」ということにあります。先生は、企業の技術者向けに1963年から14年間、大阪で7ヶ月間の長期セミナーを開催され、その後2000年に亡くなられるまで「等価変換創造学会」の会長として指導されてきました。

この理論の普及のために、2006年11月にNPO法人日本創造力開発センターを設立し、企業向けセミナーや講演活動を推進しています。CAMPの発明ワークショップとの連携もNPO事業の重要な位置づけとなっています。

今後、全国へのこども発明ワークショップを推進していくためにも、等価性の発見のゲームの「等価カード」のシリーズ化を制作していきます。

京都発の創造理論を、こどもたちに遊びを通して、他人と違うことを考えることの楽しさや知ることの喜びを体験できたらいいなと思いながら、機会あるごとにオブザーバーとして参加し、ファシリテーターと意見交換することを楽しみ喜びとしています。

鍛治舎 康昭(かじしゃ やすあき)
1944年生まれ
1967年 同志社大学電気工学部卒業
2004年 オムロン株式会社退職
2008年10月現在
けいはんな新産業創出・交流センター コーディネータ
NPO法人日本創造力開発センター 事務局長(常務理事)http://www.jcdc.cc
等価変換創造学会 幹事
趣味:読書・美術鑑賞・酒

第60回目
(2008年10月06日更新)

羽嶋 綾香/(財)防府市文化振興財団事業係主任主事(学芸員)

CAMPACOが山口県防府市の我が館へやってきたのは、クリケットワークショップを開催するおよそ2週間前のことでした。

今回、(財)防府市文化振興財団設立10周年記念事業として、アスピラート(防府市地域交流センター)で、合計6回のクリケットワークショップを開催しました。アスピラートは、音楽ホールや展示ホール、練習スタジオ、会議室などを持つ複合施設で、スタッフのうちイベントの企画・運営をしているのは私を含めて4名です。普段はライブやクラシックコンサート、講演会などの企画・運営が主な仕事のスタッフたちにとって、ワークショップの運営はほとんど初体験。さらに、公募のボランティアも交え、加えて同じ財団が運営している科学館の学芸員も応援にやってきて、総勢7名が交代で毎回10~15人のこどもたちを迎えました。

私は普段、当館で展覧会の企画とこどもを対象とした造形ワークショップの企画・運営をしています。コンサートでは、スタッフの役割分担表や仕事内容、時系列でのスケジュール表などがマニュアル化されており、マニュアル通りにやれば誰でも出来る仕事がほとんどですが、ワークショップは、講師と打ち合わせをして内容を決め素材をそろえ、活動のサポートをする・・・と、漠然とマニュアルがあるようなないような、誰でも出来る仕事ではない、というイメージがこれまでありました。

「あちこちCAMP」では、CAMPACOの中にすべてが詰まっています。
ハード面、ソフト面ともしっかりとしたサポートがあり、スタッフは「ファシリテーター」と呼ばれ、誰でもワークショップを開催することができます。
「ワークショップをこんなに整然と、誰でもやれるように出来るなんて!」と目からウロコの気分でした。

もちろん、こどもたちとの関わり方は、マニュアルにすることはできません。
けれど、6回のワークショップを経験したことで、ファシリテーターの中で各々の「きまりごと」のようなものができて、回数を重ねるごとに、ファシリテーター自身が楽しんで活動でき、結果としてワークショップ全体の雰囲気が良くなるという、正の連鎖が生まれていた気がします。

これからは、この夏に上がった経験値を生かして、アスピラートらしい、もっともっとわくわくするようなワークショップを開催したいなと思っています。

羽嶋 綾香 (はじま あやか)
(財)防府市文化振興財団事業係主任主事(学芸員)。主な仕事はコンサートの影アナウンス、花束嬢、即席PA係、チラシのデザイン、営業ほか多数。その傍ら展覧会やワークショップの企画をしている。
http://www.c-able.ne.jp/~aspi-111/

第59回目
(2008年09月05日更新)

向井 豊文/株式会社北海道CSK 専務執行役員 業務管理部長

>北海道でのCAMPは大変!?<
2005年真夏、地元経済団体の百周年記念事業「こども未来博」でCAMPクリケットワークショップを開催したのが始まり。このイベントは環境もテーマだったので、会場の冷房施設は自然エネルギーの氷柱を利用したクーラーでした。北海道なのになぜかあせをふきふきの開催は最高。

2回目の真冬1月開催では、あまりの寒さで記録用のビデオカメラが起動できず、ひたすら室温が上がるのを待つこととなり大失敗。ビデオカメラは寒冷地仕様ではないので注意!このような苦労を重ねながら、現在は札幌市が運営する児童会館と共同でCAMPクリケットワークショップを定期開催中。

>感動のエピソード<
先日、札幌市麻生児童会館でおこなわれたCAMPクリケットワークショップでの出来事。
参加した女の子が作品制作の途中から泣き出してしまい、作業が先へ進まない状態に。ここで我が精鋭ファシリテーターの出番。あの手この手の秘技を駆使した結果、なんとか作品制作を再開することができ、いままで泣いていたのが嘘のように、女の子は満面の笑みで作品の発表。ファシリテーター皆、最高の感動の瞬間!
このように北海道CSKの社員も、こどもたちの自主性と創造性を発揮させる
ための支援をするファシリテーターの経験を通じて、こどもたちと共に成長していると実感。

>地元とともに<
企業の社会的な責任・使命のひとつに地元への貢献があります。わたしたちは北海道に本社を置く企業として、CSKグループが社会貢献事業として推進しているCAMPワークショップ活動を通じて、微力ではありますが北海道の未来を担うこどもたちの育成に、これからも主体的に活動を続けてまいります。

向井 豊文(むかい とよふみ)
株式会社北海道CSK 専務執行役員 業務管理部長
北海道生まれ、札幌市在住。1979年CSK入社、1990年北海道CSK設立に参加。休日は、小樽市祝津マリーナにて28フィートのヨットBlues号でクルージング、ヨットでの世界一周を夢みる

第58回目
(2008年08月07日更新)

加藤 多美子/CAMPニュースの翻訳を毎月担当

私達にとって何が必要か?

健康・・・もちろん人間にとって必要不可欠です。健康がなければ何もできません。それ以外には?知識、知恵(考え応用する力)、そして心(思いやる気持ち)。知識は書物や教育機関で得ることができると思いますし、現代社会で賄えていると思います。
しかし知恵と心は単に教えてもらって学べるものではないような気がします。知恵と心は、それぞれがいろいろな場面で経験をし、自分自身で考え、感じなければ得ることができません。
私はCAMPのワークショップというのは、その体験を通して、こども達がこの知恵と心を学べる場であると感じました。各々が持っている知識だけでは、大きな何かを作り上げることはできません。個が集まり、話し合いの中で自分の意見を言い、他人の意見を認める。その中で相手を思いやる気持ちが育まれます。そしてみんなの知恵を持って、個では成しえない大きな事・物が作られていきます。
その時に、大人がただ教えるのではなく促すことの必要性も、CAMPのワークショップの中には活かされている気がします。要は、大人が上手に黒子になる・・・ということ。

すべて、今の世の中に一番かけているもののような気がしませんか?

生身の人間対人間の交流を持ち、その相手と一緒に何かを作り上げる。そのためには何が必要か?こども達がより多くこのような体験をすれば、彼等自身が、自分達の持っている知識を活かし、知恵を働かせ、未来に心ある世の中を創っていってくれるような気がします。

最後に、この『黒子』に徹し、こども達と同じ目線でワークショップを進めてくださっているスタッフの影の努力に乾杯!これからも少し離れたところから、みなさんの活動を楽しませていただきます。

加藤 多美子 (かとう たみこ)
CAMPニュースの翻訳を毎月担当
2003年11月、Tod Machover氏によるハイパースコア・ワークショップ通訳
2004年7月、Leonardo Bonanni氏によるサマーハウス・ワークショップ通訳
プライベートでは、一女の母

第57回目
(2008年07月04日更新)

山下 真智子/NPOバディング・アーティスト・ファンド・ジャパン(BAFJ) 理事

CAMPの素晴らしいところは、こどもたちに創作活動を「教える」のではなく、「発想させる」プログラムであることだと思います。BAFJでは、半年で4回のワークショップを開催、6歳から11歳まで幅広い層のこどもたちがクリケット・ワークショップやデジカみしばいに挑んできました。年令や性別に関わらず、着眼点や造形の発想、表現方法はそれぞれに個性的。私たちスタッフは、毎回、「こう来るか!?」と驚かされるとともに、「楽しかった!」と笑顔で帰っていくこどもたちの姿に、まだまだ日本も大丈夫、と妙な安心感を覚えたりしています。
BAFJは、国内外のこどもたちがアートとのふれあいや創作活動を通じて交流する機会を提供することを主な活動目的としています。しかしながら、「アート」の定義は実に曖昧で、ワークショップを開催するにあたって何を行うべきか、議論を重ねました。CAMPに出会い、「自分を表現することこそがアート」であることを確信しつつあります。

年末には、シンガポールでCAMPワークショップの開催を企画しています。参加するのは、日本から同行するこどもたちと現地のこどもたち。育った環境の異なるこどもたちがどんな発想を見せてくれるのか、どんな交流が生まれるのか、今から楽しみです。

山下 真智子(やました まちこ)
NPOバディング・アーティスト・ファンド・ジャパン(BAFJ) 理事として、ワークショップ開催や世界各国のアーティストの作品を紹介するウェブサイト“こどもちきゅうチャンネル”の運営に携わるほか、舞台・イベント等の制作を手がけている。
こどもちきゅうチャンネル: http://www.kodomochikyu.net/

第56回目
(2008年06月17日更新)

奥井 潤/株式会社島根CSK コンタクトセンター事業部 業務支援課勤務。

島根CSKでは、今年度から全社員を対象に研修の一環としてCAMPのワークショップを取り入れました。CAMPのワークショップは「前に踏み出す力(アクション)」、「考え抜く力(シンキング)」、「チームで働く力(チームワーク)」を育む社内研修としても有効であると考えたからです。また、将来的には全社員がファシリテーターとして地域社会へ貢献できればという思いもあります。

という訳で、今年の4月に第1回社内向け研修としてCAMPのワークショップを2回開催しました。参加者はそれぞれ4月入社の社会人1年生全員と、ある程度"こなれた社員"へ対してです。お題は「クリケットワークショップ」。

私自身も、「"こなれた社員向け"(以下、"社員向け")CAMP」に参加し、その翌日には「"社会人一年生向け"(以下、"新人向け")CAMP」に、ファシリテーターとして参加する事になっていました。

自分自身に問い掛ける「参加者」としてのワークショップ。
参加相手に問い掛ける補助者「ファシリテーター」としてのワークショップ。

参加者もファシリテーターも、イメージ通りの作品を完成させるため、少しでも思っているイメージに近付けるため、会場内を右往左往。クリケットは見た目だけイメージ通りに作り上げれば良いというものではなく、動きや音もプログラムしますので、とても頭をつかいます。

他のグループとの情報交換も大切で、自分のイメージしたクリケットに参考となる部分は参考にし、また、逆にアドバイスしたり様々なコミュニケーションが縦横無尽に広がっていきます。

入社年月日も所属も年齢も関係無い、純粋なコミュニケーションがそこにはありました。開始から終了までの限られた時間の中に新しい発見やふれあいがいくつあったでしょう。CAMPのワークショップは、ただ参加したり開催するだけではあまり意味がありません。CAMPという機会を通じ、CAMPを利用して、一緒に考え楽しむ事が一番大切だと気付きました。

一緒に考え楽しむ事で、参加者とファシリテーター全員の一体感がうまれます。その一体感は、その時だけのオリジナル。二度と同じ一体感を感じることはできません。是非、近いうち、島根のチビッ子達にも、この感覚を実感して欲しいと強く思いました。

その時、どんな発見やふれあいがあるのか、今からとても楽しみです。

奥井 潤(おくい じゅん)
株式会社島根CSK コンタクトセンター事業部 業務支援課勤務。
テクニカルサポートエンジニアとして、2002年10月入社後、現在に至る。業務支援課では各種研修や品質管理をはじめ事業部のコンプライアンス、採用活動支援、各種媒体への原稿制作や島根CSKでCAMP推進等を担当。

第55回目
(2008年05月07日更新)

野間 春生/朝日町一丁目子ども会 書記

CAMPに参加するこども達は、おしなべて目を輝かせ、いきいきと創作にふけっているの・・というのは、このコラムの読者にとっては当たり前だと思いますが、そのすぐ横でそれを羨望のまなざしで眺めている大きなお友達が沢山いることをご存じでしょうか。

このたび、私の住んでいる地区の自治会の子ども会として、CAMPのワークショップをお引き受け下さり、地区のこども達20名余りがその活動に参加いたしました。そして、毎回、その羨望のまなざしを向けていた主の一人である私も、はからずも臨時雇いのファシリテーターとして、ワークショップに参加する機会をいただけることとなりました。

語るまでもなく、当日は参加した息子以上に、わくわくしながら、そして、同時にCAMPのスタッフの苦労を体でもって知ることとなりました。

上手くいかなくてつまずくこども、暴走するこども・・・同じ方向を向いていながらも、多様な反応をするこどもに振り回されないように、かといって、押しつけないようにとこども以上に右往左往をするうちに、あっという間のワークショップの終了。思い切り反省しながらも、心地よい充実感を頂き、ついつい、次こそはと思い立っている自分でした。決して自分のこども時代が不遇であったわけではなく、また息子以上にいい体験もありましたが、CAMPに参加する息子を見るに付け、改めて今のこども達はいいなぁと、ため息をつく父です。

野間 春生(のまはるお)
朝日町一丁目子ども会 書記
普段は二児の父として自治会の子ども会の書記を務めつつ、本業は株式会社国際電気通信基礎技術研究所の研究員。ヒューマンインタフェースの研究が本業のはずが、計算機、ネットワーク、半導体と支離滅裂な分野に触手が伸びつつある研究生活をすごすなかで、教育機器と称しながら玩具には目がない。おもちゃ情報を日々漁り、さらには、招聘準教授として某大学院で収集したおもちゃを使った授業も担当している。

第54回目
(2008年04月07日更新)

北川 美宏/株式会社CSKホールディングス社会貢献推進室大川センター長

この4月8日はCAMPが7歳になる誕生日です。
2001年生まれのCAMPもいつのまにか小学校に入学する歳になりました。よちよち歩きのCAMPを一緒に育ててくださった皆さん、優しく見守ってくださった皆さん、国内外から叱咤激励してくださったすべての皆さまに心より御礼申し上げます。本当にありがとうございました!

おかげさまで、日本中にCAMPのワークショップを開催してくださる仲間もできて、スタートのときとは比べられないくらい、たくさんのこどもたちにワークショップを体験してもらえるようになりました。

さて楽屋話で恐縮ですが、CAMP立ち上げのときからの中心メンバーであり、CAMPにおける研究活動を引っ張ってきてくれた森秀樹君がこの3月にCAMPを卒業しました。これからは大学を中心により一層研究活動にまい進すると聞いています。CAMPのよきムードメーカーでもあった彼が抜けた穴は大きく寂しい限りですが、この7年間の蓄積を土台にして、彼もCAMPもさらに成長していければと思います。

別れと旅立ちにはやはり春が似合う気がします。
心細さや寂しさの中にも、未来に向けた明るい気持ちをもてる春。

4月、決意も新たに8年目のCAMPをスタートしました。

皆さまには、新1年生のCAMPにこれからも変わらずのご指導ご支援をよろしくお願いいたします。
    ~サクラが満開の大川センターから

北川 美宏(きたがわ よしひろ)
株式会社CSKホールディングス社会貢献推進室大川センター長。2001年4月から現職。CAMPスタート時に小学生だった一人娘が今春中学3年生に。
光陰矢のごとしを実感している今日この頃。

第53回目
(2008年03月06日更新)

安永 哲郎/コクヨ株式会社RDIセンター

造形、アート、ものづくり…そんな言葉にワクワクする人がいる一方、「工作」の二文字を見ただけで、脂汗をたらすほどの苦痛を覚える人もいます。個々の興味や関心とは別に、多かれ少なかれ、誰もが表現することへの恥ずかしさや恐れを抱えています。

だからこそ思います。周囲の人々との違いに驚きながら、自らの思いを形にしていくことの楽しさ。思いが形になった作品が放つ、独自の輝き。その素晴らしさを教えてくれるワークショップには、単なるイベントを超えた可能性があるのだと。一過性の体験に終わらせず、社会や一人一人の生活との密接な連続性を保ちながら、サステナブルに回転し続ける運動体のようなイメージ。理想的なワークショップのあり方とは、そういう姿なのかなと思います。
そんなことを考えながら、おうちでもワークショップを楽しむためのツールとして、自由工作キットシリーズ「ヒラメキット」を開発してきました。

2007年の夏に発売した「ヒラメキット VOL.3 すいそく・こうさく!ぷくぷく島図鑑 -ふしぎないきものをつくろう!」は、CAMPの皆さんの意気込みや熱い思いを目一杯詰め込んだ自信作です。イマジネーションを引き出す様々な仕掛けや、自由な発想を妨げないファシリテーションなど、あの「CAMPスタイル」が、B5サイズのパッケージの中で確かに生きています。数年来のコラボレーションを形にできた喜びももちろんですが、それをこどもたちが目を輝かせながら遊んでいる姿を見ては誇らしい気持ちになるのです。
CAMPさん、ありがとう!

安永 哲郎(やすなが てつろう)
コクヨ株式会社RDIセンター
大学では韓国語を専攻。何故か文具メーカーに入社。何故か情報系部門に配属となりSEに。その後、新規事業開発部門である現部署に異動。アート作品のようなノートシリーズ「An」およびワークショップ・パッケージ・プロダクト「ヒラメキット」の企画・プロデュースを担当している。個人的には音楽家として活動するほか、国外アーティストの招聘、美術展のキュレーションなどを行う。今夏にはボストンのバークリー音楽院でワークショップを行う予定。
ちなみに楽譜は読めません。

第52回目
(2008年02月05日更新)

ミッチェル・レズニック Mitchel Resnick/マサチューセッツ工科大学メディアラボ 教授  メディア・アート&サイエンス・プログラム 部門長

クリケット+CAMP=創造性

1月20日、CSK多摩センターにてCAMPクリケットワークショップに参加できましたことを大変嬉しく思っております。

私がワークショップの成功を審査する一つの方法。それは、参加者によってつくられる作品の多様性という点です。もしすべての作品がどれも似かよっていたら、そのワークショップにおいては、それほど創造性が出されなかったということです。1月20日のワークショップにおいて、それは全くあてはまりません。30人の参加者が、踊るトーテムポール、猫ロボット、コーヒー豆自動供給機など驚くべき広がりの創造的な作品を作りあげていったからです。

何がその創造的成功につながったのでしょうか?CAMPのワークショップスタッフが『創造的学習スパイラル』のすべての部分で確実にサポートをしていたからです。

<IMAGINE>(想像する)
ワークショップ開始前、CAMPスタッフがサンプル作品を部屋のあちらこちらに置きます。参加者は、部屋に入ると同時に作品を見、感じ、想像力を刺激され、またクリケットを使うと何が可能かという感覚を与えられたのです。

<CREATE>(作成する)
CAMPスタッフは、レゴ・ブロック、クラフト用材料、グルーガン、色マーカー、発泡スチロールのカッター、テープ、クリケット、モーター、センサー、ピコブロック・プログラミング・ソフトなど作品作りに必要なすべての道具を準備し、デモンストレーションを行います。

<PLAY>(遊ぶ)
CAMPスタッフは、参加者に実験して新しいことを試すことを促します。参加者がフロアーのいたるところで作品を追いかけたり、思いもよらない形でクラフト用の材料を使っていたり、クリケットのサウンド・ボックスを通して普通音響効果を加えてみたり・・・と、ワークショップには遊び心がいっぱいでした。

<SHARE>(共有する)
参加者は、お互い直接的に協力し合わなければいけない二人一組で作品作りをしていました。しかし、そこには共有するという間接的な形もあるのです。あるグループがロボットのボディーに段ボール箱を使った時、他のグループはそれに気づき、同じように作品に段ボール箱を使い出したのです。

<REFLECT>(反映する)
残り1時間になった頃、各チームは説明を書いた小さなポスターを作り、作品の写真を撮りだしました。ポスターを作ると同時に、参加者は作品から一歩離れ、その作品の根本にあるアイディアについて考える必要があったからです。

<IMAGINE>(想像する)
ワークショップは、すべての作品のデモンストレーションとプレゼンテーションで終了しました。でも、それは本当の終わりではありません。「想像する→作成する→遊ぶ→共有する→反映する」というプロセスを進んで行くと同時に、すべての参加者は作品の新しいアイデアや作り方を想像し始めているからです。
創造的学習のプロセスは、終わることがありません。想像から想像へ、そしてまた想像へと繰り返されるスパイラルなのです。

ミッチェル・レズニック
マサチューセッツ工科大学メディアラボ 教授
メディア・アート&サイエンス・プログラム 部門長

<略歴>
ミッチェル・レズニックは、人々(特にこどもたち)が新しい方法で新しい物事を学ぶ折、新しいテクノロジーがどのように役立つことができるのかを研究。マサチューセッツ工科大学、メディアラボの彼のLifelong Kindergarten研究グループは、受賞したレゴ・マインドストーム・ロボット構築キットの基本である『プログラマブル・ブロック』を含む様々な教育用具の開発をしている。レズニックは、コンピューター・クラブハウス・プロジェクト(低所得者地域のこどもたちが、新しいテクノロジーを使い創造的に自己を表現するアフタースクール・センターの国際ネットワーク)を共同設立。近年、レズニックのグループは、こどもたちが簡単に自分自身のアニメ、ビデオ・ゲーム、インタラクティブ・アートを作り出せる新しいプログラミング言語、『スクラッチ』を開発した。レズニックは、プリンストン大学において物理学学士号を、マサチューセッツ工科大学においてコンピューター・サイエンスの修士号、及び博士号を取得。修士取得以前に、ビジネス・ウィークという雑誌の科学・技術ジャーナリストとして5年間働く。
『タートルズ』『ターマイツ』『トラフィック・ジャム』を含む数冊の著書、及び共同執筆の本もある。

第51回目
(2008年01月11日更新)

荘司 徹/株式会社福岡CSK 管理部 所属

今回、初めてCAMPを開催しました。

プロジェクトを結成して右も左もわからず、一からの状態でメンバーが集まっ
てスタートしました。いろいろ、試行錯誤しながらああでもない、こうでもないと迷走しながらすすめていきました。

そしていよいよワークショップ当日。
”このワークショップに失敗はない”の言葉を胸にスタート。
受付に来るこどもたちが、みんなしっかり挨拶ができることにびっくり。

また、こどもたちはとても社交的ですぐ仲良くなるし、どんどんアイディアを
ぶつけあって作品を作り上げていく。そんな光景を目の当たりにしてとても感
心しました。

元気良く挨拶すること、創造豊かにすること。
とても大事なものを思い出しました。

リフレクションでは、本当に涙があふれてくるぐらいの感動でした。
終わったあと、こどもたちの感想文を見ましたが、あんなにいろいろな子がい
るのにみんな、楽しかった、良かったってコメントを書いてくれました。

このワークショップに失敗はありませんでした。

参加したスタッフとは、同じ釜の飯を食べた仲のような仲間意識が持てたし、
自分が人として少し良い方向を向いた気がします。

参加してくれたこどもたちに感謝しています。

今後も福岡でワークショップを継続して行って、是非、輪を広げていけたらと
考えております。

荘司 徹(しょうじ とおる)
株式会社福岡CSK 管理部 所属
2002年株式会社福岡CSK入社。福岡CSK CAMP初開催メンバーとして
参加。趣味はバンド。仲間に恵まれて、ライブに参加させてもらっています。
CAMPのワークショップ同様、ライブをするごとに感動や活力をもらって生
きています。

2007年

2006年

2005年

2004年

2003年

boy ファシリテーターリレーコラム girl

CAMPで活動するファシリテーターが、ワークショップへの想いを語ります。

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第26回目
(2005年12月06日更新)

うえのうけんじ

2005年11月13日
写真のワークショップがありました。

そのワークショップの中で、写真家広川泰士さんが撮影された参加家族のポートレイトを10枚ほど目にしました。今までのポートレイトのイメージとは違う、家族ではない僕までおもしろく見られる、そんな写真となっていました。

この家族はお母さんと娘二人対お父さんという関係だな、こっちの家族は弟が甘えんぼで家族のペースを作っているな、など。
・・・そう、その写真には家族の関係性まで写っているのです。
写真に写される情報が姿かたちだけではない。

普段のワークショップでもその日を振り返るために写真を撮影しています。
1人を写すときは、その頭の上に「!」や「?」が見える瞬間。
2人を写すときは、その瞬間に加えて2人のやり取りが想像できるような一瞬。
3人、4人・・・と続いていきます。

けれどたくさん写しすぎると、焦点がぼやけてしまう。
ポートレイトでは背景は一色で何もなく、写るものは家族だけ。
だからこそ、家族の関係が浮き彫りになるのだと思います。

ワークショップでも、そんなこどもたち同士の関係性まで見えるような写真を、こどもたちにこそ観てもらいたい。
そこにはきっと、普段鏡の前では見られないようなステキな表情も想像もして
いないような表情も写っていると感じているからです。

けれどまだまだ出遅れて撮れていない写真、見落としている瞬間がたくさん・・
その瞬間のために這ってでも、頭を打ってでもカメラを構えたいと思います。そんな風に思えたのも、初めてのワークショップのリフレクションで「いい顔」をたくさん観たから。

うん、ワークショップはファシリテーターにも、良い何かを与えてくれているようです。

写真を撮ることは楽しい!

うえのうけんじ(バトンは こうたじゅんこさんへ)

第25回目
(2005年11月09日更新)

おばた けん

ハイサイ!!
沖縄で「CAMPクリケットワークショップ」を開催しました。

夏休みも終わり、真っ黒に日焼けしたこどもたち。
期待と不安な表情を覗かせながら、ワークショップ会場にやって来ました。

くじ引きで二人一組になり「海」をテーマにした作品をつくります。(お父さんが海人(うみんちゅ・漁師)だから船を作るんだ!と言い張るこどもも…)

はじめて出会ったこどもたちは最初はコミュニケーションが上手くとれなくても、ワークショップが進むにつれて大人とは違う感性できちんとお互い協力して作品をつくりあげていきます。

こどもたちのそんな姿を目の当たりにしながら、何かの縁で出会う人と人との出会いやつながりって(言葉では表現しにくいですが)、いいなと感じました。

そうそう、沖縄にはこんな言葉があります。
「いちゃりばちょーでー」
一度あったらみな兄弟という意味です。一期一会の出会いを大切にする気持ちを忘れたくないですね…。

こどもたちが作り上げた作品の発表を聞きながら、感性や創造力の豊かさを感じつつ、ワークショップの魅力も感じることができました。

そしてワークショップも終わりに近いた頃、外からお祭りのエイサーの掛声が「イヤー・サッサ」
大人たちの疲れも露知らず、こどもたちはお祭りへ…。
底知れぬこどもたちのパワーにびっくりです。

おばたけん (バトンは うえのうけんじさんへ)

第24回目
(2005年10月06日更新)

ふじお とうすけ

こどもについて

サマーハウスに参加した。
3日間続きの、大掛かりなワークショップ。
3日間、同じこどもたちとずっと一緒にいると、少し親心みたいなものが芽生えた。

「親はなくとも子は育つ」というけど、その逆はなくこどもがいなければ親が育つことはないように思う。こどもを守ろうとする気持ちや、こどもを愛しむ気持ちが、人を親にしていくのではないだろうか。私はまだまだ親という大変な立場にはないけれど、こどもと触れ合うことで少し大人になれた。

自分が大人になるにつれ、彼らのことがよく分かるようになってきた。こどもの心とはなんて分かりやすいのだろう。彼らのことはよく理解できる、なんと言っても、自分も同じ経験をしてきているのだから。

そんなことを考えながら、自分の子供の頃に鑑みれば、親の姿が思い浮んだ。
子供の頃の私は、親に色々なことを隠しているつもりで、その実はほとんど見透かされていたんだろう。

あぁ、なんて恥ずかしい。
大人たちは、どんな気持ちで私に接してくれていたんだろうか。

私はこどもと触れ合うとき、その向こうに幼かった私を可愛がってくれた人を写し、そのこどもに幼かった頃の自分をみてしまう。私を可愛がってくれた人たちと同じようにこどもたちに接し、私がもらった愛情を、こどもたちへ返そうと思っている。

彼らが、大人になったとき、こどもの向こうに私の姿を思い出してくれればいいな、と思う。

ふじおとうすけ (バトンは おばたけんさんへ)

第23回目
(2005年09月12日更新)

やまざき さほこ

はじめの一歩

私は、人前で話すのがとても苦手。
考えただけで、心臓がドキン、ドキン。
手も汗でぐっしょり。
大勢を目の前にした瞬間、頭の中が真っ白。

ところが、最近、以前ほど動揺していない自分に気づきました。
大きな発見でした。
人前で話す機会が多かった結果のようです。

日常の生活の中でも、いつの間にか何気なくできるようになっていたことがあることに、近頃よく気づきます。必要に迫られたいろいろな経験は、無駄ではなかったんですね。

過ぎてしまえば何気なくですが、最初はいつもチャレンジです。
これからも勇気をもって、"はじめの一歩"!

やまざきさほこ (バトンは ふじおとうすけさんへ)

第22回目
(2005年08月09日更新)

いしかわ たかこ

花咲かじいさん

わたしは花咲かじいさんを知っています。

わたしと花咲かじいさんは、よく同じ苗木をそれぞれ育てます。
これまで、ハイビスカス、がじゅまる、ポトスなどなど、いろいろチャレンジしました。

でも、わたしの木はいつもある程度育った後、ぱったりと成長が止まってしまいます。狭い部屋なので、そんなに大きくなっても困るからいいか。と思っていると、いつの間にか先っちょが黄色くなっていたりします。

これはまずいかも。と思っておじいさんのところに持っていってリハビリしてもらうと、あら不思議!?枯れかけた木や花もおじいさんの手にかかればたちまち元気はつらつ!ぐんぐん育つ!

「どうして?」と聞くと答えはいつも同じ。
「愛情が違うんだ」
(ほんとに毎回同じ言葉が返ってくる)

おじいさんのお部屋は、まるでジャングルのようにわっさわっさ。私と同時に育てはじめたハイビスカスが何本も咲いています。挿し木でどんどん増えているのです。

おじいさんはよくメガネを頭の上にのせて、じーーーーーーーっと葉っぱを見つめています。木の状態をじっくり観察しているのです。
私は自分の気まぐれで、水を換えなかったり、急に栄養剤をあげたり、Xmasだからとリボンを結んでしまったり・・・・・反省。わかっていてもまた繰り返してしまう自分が情けない。

でも、次は何にチャレンジしようかな。
育てる、ということはとてもむずかしいけど、やっぱり楽しいな。と思うのです。

いしかわたかこ (バトンは やまざきさほこさんへ)

第21回目
(2005年07月07日更新)

むらた きょうこ

告白

一日一日『大人』な年齢に近くなっていく、なってしまった。
と同時に何かが少しずつ少しずつはがれ落ちていってしまうような、『嬉しい』とか『楽しい』とか『すごい』とか『悲しい』とか、、、、。
ヒットする基準が高くなってきているような、退化しているのか進化しているのかわからない。そんな思いに陥ることがある。

みんなと接するときにいつも思うのが、その幅の広さ。

ドキドキ、ワクワク、ハラハラ、やられたっ!、あぁまたやり直し、、、、

ちょっとしたことでも響く。(だから言葉には慎重にならないといけない。)

あ、そういえば私もこどものころにそう思った気がする。

いつのまにかそれが普通になり、見過ごしても特になにも感じない、気づかないものになってしまったこと。
ひとつひとつ気にしていたら、どうしようもないし、慣れた、歳を重ねた、ということなのだろうけど。
でも、たまには思い出したい。

実は、ワークショップ中、ファシリテーターしながら、みんなから溢れたそんな鮮やかな感情の一葉一葉を拾って、思い出して、ためているのです。

むらたきょうこ(バトンは いしかわたかこさんへ)

第20回目
(2005年06月07日更新)

こいずみ ひろあき

ある日、社内でこども向けのワークショップを開催していることを知りました.。とても興味を持って見学と称し会場に遊びに行きました。

ファシリテーターの流れるような進行に感動し、作品を作るこどもたちのエネルギーに圧倒され、ワークショップが進むにつれて、ついに見ていられずに声をかけ、手を貸して、一緒に考えて・・・。
自分の会社で開催していることが夢のように思え、その後ファシリテーターの社員ボランティア募集を見た時には、迷わず手を挙げていました。

ファシリテーター経験はまだ数回ですが、毎回違う気づきがあります。こどもたちの考えていることを感じ取る難しさに悩みながら、「う~ん・・・実はファシリテートされているのは自分かもしれないな!?」なんて思うこともあります。肉体的には疲れますが、精神的な楽しさと満足感を毎回体験しています。そしてCSKが、このような社会貢献活動に取り組んでいることを誇りに感じています。

こどもたちの創造性や表現力、目的に向かっていくパワー、これは僕たち大人が忘れかけていたモノではないでしょうか?作品完成という目的に向かってどんどん進んでいく。時には考え込んでまったく止まっちゃう場面もあるけど、想像を膨らませて、パートナーと相談して、ファシリテーターに聞いて、また進んでいく。その一瞬一瞬がすべて輝いている宝物のようです。

また、次回の宝物(ワークショップ)を楽しみにして・・・

こいずみ ひろあき (バトンは むらたきょうこ さんへ)

第19回目
(2005年05月09日更新)

おおにし けいこ

いつから人は人となったのでしょう。
旧石器時代後期よりも以前にさかのぼると、正確には人間について語れるとはいえなくなり、あちらこちらの洞窟には人間に似た生き物が住んでいまた。
この生き物が他の動物と違うのは、道具を使い労働し、石を切るための仕事場を持っていました。けれどこの生き物は、決して芸術を作らなかったのです。
しかし旧石器時代後期の前半期に作られたものと推定されるラスコーの洞窟の壁一面には、おびただしい数の美しい動物たちが描かれています。

人に芸術は必要なのでしょうか。
なくても生きていけるものなのになぜ存在するのでしょう。
ワークショップも同じで、生活の中で必ずしも必要なわけではなく、行かなければならないものでもありません。
けれど私は、こどもたちが自分の表現を形にすることを通して人とつながることや同じ時間を共有することで生まれるかけがえのない場の一つだと実感しています。

きっと芸術は、崇高なものでも生活に必要なものでもなく、人間がどう生きていくかのキーワードなのではないでしょうか。
そして、ラスコーの洞窟は、人が無から作り出される想像の能力を示した最古の芸術生誕の場であると同時に、人が人となった場所なのかもしれません。

おおにし けいこ (バトンは こいずみひろあき さんへ)

第18回目
(2005年04月13日更新)

つじ ともこ

最近、目のまわりに細かいしわができているのを発見しました。(ちょっとショック)ふだんあんまりじっくりと鏡を見てないので、ずっと前からできていたんだろうけど、気づいていなかったんですね。

しわに気づいたとたん、ひとの目の表情が気になりだしました。「ひとの目が気になる」ではないですよ。いろんな人の目と、その周りのしわがどんな感じなのか、よく見てみることにしました。

大きくて吸い込まれそうな目、小さい光が奥のほうできらっとまたたいている目、疲れているのか、すみっこが暗くなっている目…。

目の周りのしわも、人それぞれでおもしろい。お年寄りのしわは特に魅力的ですが、50歳くらいの働き者のおじさんにも「やったぜ」と笑っているようなくっきりとしたいいしわがあることに気づきました。
メイクしている目を見るのもおもしろい。若い女の子の目はまつげがふさふさして、アイシャドウがきらきら。マダムのまぶたも色とりどりで、おしゃべりしているみたいににぎやか。

目には、その人の毎日の暮らしぶりと歩いてきた道のりが現れているようです。

こどもの目をのぞきこむとその透明さに驚きます。当然しわなんてないですし、つるっとしたもんです。あんまり無垢なのでこの生き物はどこか遠くから運ばれてきたのか、とも思います。きっと心の中では苦しかったり腹が立ったりしているでしょうが、まだきれいなまんまです。

いつか少しずつしわができて大人の顔になったとき、いい目をしていてほしい。こどもの透明な目に何を見せ語りかけようか、先に大人になった手前ちょっと責任を感じています。ワークショップの組み立てを考えるとき、こどもとの関わり方にいつも悩んでしまいます。
でもどちらかというと、くるくるよく動く目を、もっとくるくるきょろきょろさせてやりたくて、次の遊びを考えていると言ったほうがいいのかもしれません。

 つじ ともこ (バトンは おおにしけいこ さんへ)

第17回目
(2005年03月16日更新)

まきのまお

こどもは投げかけた言葉を素直に響かせる。
なので、褒める事はもちろん、絡まっている糸をほぐす言葉がワークショップで基本なんだけど、とっても重要なファシリテート。

一年で最大級のクリスマスワークショップ。
  
こども達も今日はドキドキわくわく。
  
ちゃんとリーダーできるかな?
皆と仲良く楽しめるかな?
  
そんな不安と期待が入り交じった顔をしている。
  
もちろん新米の私も。

そんな中、初めてのグループ共同作業「グループ名を決める」。
  
するっと名前が出て来るチームもあれば、皆が遠慮して出て来なかったり、決められなかったり。
  
私も一緒に
うーん。どうしよう、ね?

ふとある女の子の書いた提案を見ると、
  
すっごい上手!字が!!
  
思わず口に出た。
  
次にこのチームのテーブルに戻って来ると、その子のがグループ名になってた。

こっちは、皆遠慮して出て来ない。
  
やらないと、良いのも悪いのも出て来ないよー。
  
全員にひとまず書いてもらった。
  
次にこのチームのテーブルに戻って来ると、皆のを繋げてグループ名になってた。

ケーキにクリームをぬる作業。
  
あるグループは、ちょこちょことぬり足していたのでいったん沢山クリームをスポンジにのせてからが早いよ?
「これでいいの!」
おっ、何か策があるのね?要らない一歩先周りをしちゃったな。
  
今度戻って来たら、クリームの仕上がりがすっごく丁寧なケーキになってた。

そう、必ずしもそれが大人から見た「絡まった状態」ではない事もある。

色んな状況や色んなパーソナルを持ったこども達でとても複雑に要素が絡み合っている、答えもその数以上にある。かといって恐れても始まらない
  
まずは素直に子ども達がやり遂げた事や気づいた事に驚きと暖かいまなざしのある言葉を投げかけれればこども達が響き、私もそのまっすぐな気持ちに後押しされて動く。
  
そしてワクワクが伝染していくのだ。

これを体験した人は、きっと止められないと思った。

第15回目
(2005年01月07日更新)

いしかわ たかこ

「スイッチが入る瞬間があります」

3年前、初めてCAMPを取材した時のあるファシリテーターの言葉です。スイッチが入る?!ワークショップに参加するこどもたちには、まるでパチッと音が鳴ったかのように切り換わる瞬間があるそうです。1度スイッチが入れば、それはそれは大人顔負けの集中力をみせるとか。

3年が経ち、私はCAMPのファシリテーターになりました。

ひとりの子が自己紹介で「今の気持ちはブルーです。あまり期待していないから・・」、この言葉に新米ファシリテーターの私は動揺しました。

だるそうにパソコンで練習問題をはじめた彼。クリケットにダウンロード・・・失敗。もう1回ダウンロード・・・また失敗。側で見ている私はハラハラ。

「・・なんで?」
次の瞬間、私を見上げた彼の表情を見たとき、忘れかけていたあの日の言葉が一瞬にしてよみがえりました。・・・・スイッチガハイルシュンカンガアリマス・・・・これかぁっ!

「始めると、やりこめて、みんな個性的な作品ができて楽しめた」最後に書いてくれた感想です。

新米ファシリテーター、これからがんばります!

2004年

2003年