ファシリテーターの声

京都・大川センターで開催されたCAMPの「発明ワークショップ」。今回は「等価変換理論」という方法を用いて、今までにない建築をつくるというもの。参加したこどもたちは年齢も性格も様々。初対面のメンバーも多く、協力して一つのものをつくりあげるのは難しそうに感じますが、ファシリテーターはどうやって彼らの主体性を引き出すのでしょう?

ワークショップの様子

ワークショップの様子

最初に「建築」と「等価変換理論」の説明を受けたあと、3,4人のグループに分かれてどんな建築をつくるか話し合いました。リーダーが上手に先導しているグループもあれば、それぞれの意見を曲げずにまとまらないグループも。なかなか話し合いは終わりません……。

やっと設計書を描き終えて、模型作り。発泡スチロールやプラスチックの素材を切ったり貼ったりしながら、アイディアを形にしていきます。黙々と細かい部分に凝るこども、大雑把に全体を形づくっていくこども、自然に役割分担がされて個性が表れていました。制限時間をオーバーしながらも模型が完成し、最後にみんなでグループ発表。アイスクリームの形をした回転レストラン、壁や天井にひっついて歩ける建物など、「どこからこんなこと考えつくの?」と思うような独創性あふれる建物ばかりで、こどもたちの可能性が広がるワークショップの魅力を垣間見ることができました。

ファシリテーターインタビュー「こどもの主体性」

ファシリテーター

(左から)ファシリテーターの村田さんと池田さん

ワークショップのあとに、ファシリテーターの村田さんと池田さんにお話を聞きました。池田さんは、今回のワークショップの進行役であるチーフ・ファシリテーター。

「ワークショップは、見ているのと実際やってみるのではまったく違います。参加するこどもたちも毎回違うし、個性もバラバラ、だから何が起きるかいつも予測ができないんです」(池田)。

予測不能なワークショップを進めていくために、大切にしていることはなんですか?

「こどもを信じて、向き合うことです。考え方ややり方を押し付けることはしないようにしています。ただ、なかなか難しいんですけどね。制限時間あと5分、というときには“急いでしまう自分”と“あと5分できっとできると信じる自分”のあいだで揺れることもあります(笑)」(池田)。

「かかわりすぎないということです。これは、CAMPの特徴とも言えるかもしれません。たとえば煮詰まっているこどもがいたら、アイデアを引き出すような投げかけだけして、こどもから出てきたものを受け入れるようにしています。大人のペースを押し付けずこどもたちに任せた時は、ワークショップ後の彼らの表情も違ってくるんですよ」(村田)。

CAMPのファシリテーターの楽しさをどういうところに感じていますか?

「毎回、気づいたり感じさせられることがある。そうして考えることが、自分の成長につながっている気がします」(池田)。

「そうやって、こどもたちから刺激を受けて学ぼうとする気持ちがある人は、ファシリテーターに向いているんだと思いますよ」(村田)。

“教える”でもなく“押しつける”のでもない、ファシリテーターのこどもたちへのかかわり方は、温かくやわらかく見守るスタンス。ファシリテーターに“信じられている”ということが、こどもたちの自分らしさや自主性を引き出してくれるようです。

(2008年5月 取材:カフェグローブ・ドット・コム 小川幸)